2022-09-13
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DXとは? DXの基礎知識をご紹介
- ビジネストレンド
ビジネスにおいて、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
昨今、ビジネス環境は目まぐるしく変化しており、今後ますます「DX」や「デジタル化」の注目度は高まっていくことでしょう。
そこで今回は、DXの理解を深める第一歩として、DXに関する基本的な知識についてご紹介します。
DXとは
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」を略した言葉で、「ディーエックス」と読みます。
そのままだと「DT」と略しそうなところですが、「T」ではなく「X」を用いるのはなぜでしょうか?
これは、「trans」の持つ「交差する」という意味から、英語圏では接頭辞のtransに「X」の略字を充てる習慣があることが由来と言われています。
それでは、DXの定義についても確認していきましょう。
DXの定義
DXは、2004年にウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、同氏による論文『Information technology and the good life』内で初めて表現されました。
ストルターマン教授によるDXの定義は、以下の通りです。
ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる
-Information technology and the good life (Erik Stolterman,2004)
この時点では、「DX」という概念は抽象的であり、社会現象として捉えられたものでした。
経済産業省『DX推進ガイドライン』による定義
その後、ビジネスにフォーカスした概念として「DX」という言葉が使われるようになっていきました。
経済産業省が2018年に策定した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』(DX 推進ガイドライン)では、DXを次のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
DX推進ガイドラインでの定義は、ビジネスシーンにおける「DX」を定義したものであり、当初ストルターマン教授が提唱したDXの定義とは、性質が異なるものになっています。
また、経済産業省が同ガイドラインにおいてDX推進を提言したことで、日本国内においても「DX」という言葉への注目が集まるようになりました。
身近にあるDXの事例
それでは、DXの定義を確認したところで、身近にあるどんなものが「DX」にあたるのかを見ていきましょう。
セルフレジ
セルフレジは、商品の会計を顧客自身が行うレジのことです。
コロナ禍をきっかけに導入が進み、近ごろはスーパーやコンビニエンスストア等で目にする機会も増えているのではないでしょうか?
セルフレジの導入により、レジを担当する人員を削減できるため、人件費の削減に繋がります。
経費削減にメリットがあるだけでなく、小売業界において深刻な問題である人手不足の解決策としても有用であり、注目が集まっています。
AI家電
自走する掃除機である「お掃除ロボット」やAIアシスタント機能を持つ「スマートスピーカー」等、日常的に使用する家電製品にも、AI(人工知能)が搭載されているものが増えてきました。
従来は自身でアクションを起こす必要があったことも、AI機能によって自動化できるようになったのです。
AI家電は家事の効率化等、日常生活をアシストしてくれます。これらを上手く活用することで、ますます便利な生活が送れるようになるでしょう。
動画配信サービス
インターネット回線を利用した動画配信サービス(VOD)もDX事例と言えるでしょう。
従来、映画やドラマを視聴するためには、レンタルビデオ店でDVDやブルーレイを借りて視聴するのが一般的でした。
レンタルビデオ店の営業時間内に来店しなければ、視聴することが叶わなかったわけです。
それが2010年代以降、サブスクリプション型の動画配信サービスが普及したことにより、インターネットが繋がれば、「いつでも」「どこでも」好きなだけ視聴できるようになりました。そうした利点が、コロナ禍の外出自粛による巣ごもり需要に対応したことも影響し、動画配信サービスの需要も急増しました。
ここまで、身近なDX事例として3つ例を挙げましたが、いかがでしたでしょうか。
「DX」というと、難しい話のように感じるかもしれませんが、意外と日常生活にもDXは浸透してきていますね。
DX注目の背景
経済産業省のDX推進ガイドラインにより、日本国内でもDX推進が急務と言われるようになり、日常にも浸透しつつあるDXですが、そもそもなぜこれほどまでに注目されるようになったのでしょうか?
ここでは、DXが注目されるに至った背景から、DXに取り組むべき理由について考えてみたいと思います。
デジタル・ディスラプションへの危機感
総務省の『令和3年版 情報通信白書』によると、デジタル企業による市場参入および破壊的イノベーションにより、既存企業が市場からの退出を余儀なくされる「デジタル・ディスラプション」という事例が発生しています。
同書では、アメリカにおける事例として、Amazonに代表されるインターネット通販サービスの台頭による大手の小売事業者の経営破綻をはじめ、先述のDX事例においても取り上げたように、Netflixなどのインターネット動画配信サービス登場による大手レンタルビデオ・DVDチェーンの倒産、タクシー配車サービスのUberや民泊仲介サービスのAirbnbといったシェアリングエコノミーの出現による既存の業界への破壊的な打撃について取り上げられています。
デジタル・ディスラプションの例はアメリカだけにとどまらず、国内外でも確認されています。
こうした状況を踏まえ、今後のデジタル時代で企業の競争力を維持・強化していくためにはDX推進が急務と言われているのです。
≫参考:令和3年版 情報通信白書|総務省
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年9月に公表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』において登場した言葉です。
もし日本でDXが推進されなかった場合、「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」として、警鐘を鳴らしています。
これは、日本企業の多くが抱える老朽化・複雑化した既存のITシステムに起因するリスクであるとされています。
既存のITシステムは、自社の事業に最適化して開発されたものが多く、長年短期的な観点でシステム開発を繰り返してきたことにより複雑化・ブラックボックス化してしまっているのです。
このような老朽化・複雑化したシステムの保守費や運用費が予算を圧迫することに加え、システムの仕様を把握している人材のリタイアやサポート終了によるセキュリティリスクの高まりも懸念され、このまま放置すると最大で年間12兆円もの巨額の損失に繋がると推定されています。
≫参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
コロナ禍による働き方の変化
一般に、多くの人がDXに注目するようになった大きな要因として、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとしてテレワークが広まったことが挙げられるでしょう。
通常通り出社して業務ができなくなったことにより、テレワーク環境の整備が求められました。
それに伴い、従来アナログで対応していた業務もデジタルへの転換を迫られることとなり、従業員の中でも「デジタル化」の意識が浸透したという企業も多いのではないでしょうか。
「出勤=出社」が当たり前でなくなった今、働き方も変化してきています。
今後は働き方改革の一環としても、テレワーク環境の整備は重視されることが想定されます。
デジタル化にまつわる用語との関係性
「デジタル化」という言葉が出てきたところで、DXと「デジタル化」について確認していきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)と一緒に語られることが多い言葉に、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」というものがあります。この2つの言葉は、いわゆる「デジタル化」を意味するものです。
DXと混同されがちな概念なので、ここでそれぞれの意味を整理してみます。
経済産業省が2020年12月に公開した『DXレポート2』では、以下の通り定義されています。
- デジタイゼーション
アナログ・物理データの単純なデジタルデータ化 - デジタライゼーション
個別の業務・製造プロセスのデジタル化
デジタイゼーションは、具体的には文書の電子化等、これまで業務の中でアナログで行ってきたことをデジタル化することです。アナログデータをデジタル化することにより、現状の業務の効率化を図ることを目的としています。
一方、デジタライゼーションは、デジタイゼーションよりもさらに進み、データ活用によるプロセス全般のデジタル化のことを指します。
デジタイゼーションは、一つひとつの作業のデジタル化を進める部分的なものであるのに対し、デジタライゼーションは一連の業務プロセスをデジタル化するものなので、対象とする範囲が大きな違いと言えます。
デジタイゼーション、デジタライゼーションとDXの関係性を示すと、以下のようになります。
必ずしもDXを推進するためにデジタイゼーションやデジタライゼーションを経由する必要はありませんが、業務プロセスの中に多くのアナログ要素が残っている場合、まずはデジタイゼーションから取り組み、ステップを踏んでDXを推進していくのが一般的です。
DX推進のポイントについては、また次回改めてご紹介します。
≫参考:DXレポート2|経済産業省
まとめ
今回は、DXについての基本的な知識について確認しましたが、いかがでしたでしょうか。
「DX」という言葉が注目を浴び、ビジネスシーンでの登場機会も増えただけに、基本的な概念を理解することの重要性も高まっていると言えます。DXの理解を深める上で、本稿の内容を参考にしていただければ幸いです。
次回も引き続き「DX」をテーマに、特にDX推進のポイントについてご紹介したいと思います。
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